『Shako Mako』
by Hailey Gates
中東のとある町。通りを行くパン売りの「ファラー」のそばを、兵士に囲まれた米軍車両がゆっくりと通り過ぎる。一瞬の静寂。そして、すさまじい爆発。傷を負い、血を流す市民。戦争の恐怖。あたりを見回し、愕然として泣き叫ぶ「ファラー」。しかし、ここで目にしたものは何ひとつ現実ではありません。「ファラー」は実は、ライラという女優の卵が演じる役です。そして、場所はイラクではなく、米軍の出征前の訓練に使われるカリフォルニアのフォートアーウィン陸軍基地に作られたレプリカの村です。台詞もなく端役でしかない役を演じるこの味気ないシミュレーションで、ライラは自分の演技力が無駄になっていると感じています。彼女はさらに深刻に考えます。ライラは解決の道を画策します。
へイリー・ゲイツが監督を務める『SHAKO MAKO』は、ミュウミュウ「女性たちの物語」の第17弾です。本ショートフィルムシリーズでは、国際的に活躍する才能ある女性映画監督が、21世紀の虚栄とフェミニニティを追求します。
ヘイリー・ゲイツは、アメリカの作家、女優、モデル、ジャーナリスト。ロサンゼルス育ちで、ニューヨークを拠点に活躍。ティッシュ・スクール・オブ・アーツのエクスペリメンタル・シアター・ウィングを卒業後、「パリ・レビュー」誌に勤務。退職後は、バイスランドのドキュメンタリーシリーズ『States of Undress』を制作。へイリーが世界中を旅して、時には紛争地域を訪れ、政治的な問題をはらんだ環境でのファッションウィークの社会的側面について、レポートする番組です。へイリーはまた、評価の高いデヴィッド・リンチ作品の新シリーズ『ツイン・ピークス The Return』や、メリル・ストリープ主演の長編映画『幸せをつかむ歌』にも出演しています。ドキュメンタリードラマ『A Space Program』では、アーティストのトム・サックスと共同で脚本と制作を手がけました。そして、ミュウミュウの2015年秋冬広告キャンペーン「Subjective Reality」にモデルとしても登場。
『Shako Mako』の背後にある衝動について、ヘイリーはこう語ります。「私は、人が演じるということに魅了されるようになりました。ただし現実の世界でね。そして、それが精神やあなたの心の状態に及ぼす影響についても。このような軍事演習を導入したのは、テレビのプロデューサーです。ハリウッドのような施設で兵士を訓練してイラクに送り込んでいたなんてとても興味深く感じました」。ヘイリーは、バグダッド出身の父親を持つ女優のアリア・ショウカットのために、主役のライラを書きました。「私がずっと演じたかった役柄です」とアリアは語ります。「あまりにも役を求めすぎる女優。私に通じる部分があります。このように長年の思いを結実できて、私は本当に幸運です。」
「ミュウミュウは、いつも大胆さ、強さ、ユーモアを表現してきました。それらは、私が非常に大切にしているものです」と語るヘイリー。進行中のプロジェクトに貢献できて光栄だと言います。「私より前に、私が憧れる多くの人たちが『女性たちの物語』を作ってきました。」
『Shako Mako』は、芝居がかった戦争の有様、物憂げな民族的固定観念、イスラム恐怖症といった難しい問題から目を逸らしていません。ただしその代わりに、この極めて男性的なシナリオが、そこに存在する女性たちの視点から展開されます。彼女たちは例外なく賢く、機知に富み、創意にあふれ、そして、この言葉を使うのは2度目ですが、大胆な女性です。
「女性たちの物語」の過去の作品:ハイファ・アル=マンスール監督『The Wedding Singer’s Daughter』、ダコタ・ファニング監督『Hello Apartment』、セリア・ロールソン・ホール監督『(The [End) of History Illusion』(歴史の(終焉の)幻想)、クロエ・セヴィニー監督『Carmen』、クリスタル・モーゼル監督『That One Day』、河瀨直美監督『Seed』、アニエス・ヴァルダ監督『Les 3 Boutons』、アリーチェ・ロルヴァケル監督『De Djess』、ミランダ・ジュライ監督『Somebody』、ソー・ヨン・キム監督『Spark and Light』、ヒアム・アッバス監督『Le Donne della Vucciria(ヴッチリアの女性たち)』、アヴァ・デュヴァーナイ監督『The Door』、マッシー・タジェディン監督『It’s Getting Late』、ジャーダ・コラグランデ監督『The Woman Dress』、ルクレシア・マルテル監督『MUTA』、ゾエ・カサヴェテス監督『The Powder Room(パウダールーム)』
Photos by Brigitte Lacombe